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サマータイムの経済効果の嘘

今やミスターサマータイムと(一部で)呼ばれている 上原 哲太郎 先生の投稿に対するコメント欄で、藤若 亜子 さんに教えていただいたのですが、日本生産本部が2004年4月に発表した「生活構造改革をめざすサマータイム」という報告書があまりに酷かったので、重複になりますが自分のFBにも投稿しておきます。

一番ひどいのが、
■「サマータイムによる交通事故件数減少数は年間1万件相当 その経済効果は年間約460億円」
という主張でありまして、これは季節毎、時間毎の交通事故発生確率を出して、それがサマータイムでどう変わるかを試算したというものです。その結果、事故の起きやすい夕暮れ時の交通量が減るから事故が減ることが分かったとしているのです。
ところが、これが誠に酷い試算で、その前提が、「事故の発生確率が、時間(明るいか暗いか)だけで決まる」というものなんですね。それで、交通量と一時間ずらした確率を掛けてサマータイム後の推計値とするという、何ともお手軽な計算です。
当たり前のことですが、事故の発生確率が朝と夕方に高いのは、交通量が多くて道路が混んでいるからで、明るい暗いはごく僅かな影響しかないと考えるのが自然です。一時間ずらした掛け算の積が小さくなるのは、元の確率と交通量に相関があるからで、ズラせば相関が低まりますから、山と山を掛ける部分が少なくなるので、積は小さくなります。
これ、やった人は嘘だと分かっててやったんでしょう。情けなくなる資料ですね。

他も全部ダメでありまして、
■「サマータイムによって平日のボランティア活動等の参加率が日曜日なみに増加したと仮定する」
⇒そんなの無理。仕事で疲れた人が、ちょっと明るいだけで、日曜日並みに活動できるわけない。

■「サマータイム制度の導入は、ガーデニングや園芸・庭いじり、市民農園といった活動を活発化させる」
⇒そんなこと断定できない。それに、だから屋上緑化が進むという話で経済効果を試算するのは、「サマータイムの効果」の試算としては明らかに間違い。

ということで、14年も昔のこととはいえ、こんな出鱈目な推計で政策提言していたのかと思うと本当に情けない。まさか、最近のサマータイム論議で「〇億円の政策効果」とかいうのが出てましたが、まさかこんな出鱈目なことやってないですよね。私は最近の試算の根拠を確認してませんけど。

(追記)駄目だ駄目だというだけでは教育者としてどうよ、と思ったので、学生が書いてきたレポートだと思ってコメントすると、交通事故数の推計は、事故率を混雑度(走行台数)と、その時間のその季節における平均的な明るさ(地理的にも人口重心的にも、東京の日の出日没データを使っていいから)で重回帰して、明るさ要因の有意性を調べなさい。もし有意なら、その部分だけを抽出してサマータイム効果と考えては、という助言になりますかねえ。薄暮時ダミーを入れると有意になるかもよ、などと指導するでしょうね。その時には、日の出日没時間における均時差の効果も考えるといいよ、とかね。でも多分、有意にはならないだろうから、その時は「じゃあアプローチを変えてみようか」とか、「有意な差がないというのも立派な研究成果だよ」というかもしれません。

■公益財団法人日本生産性本部 – 生活構造改革をめざすサマータイム

https://activity.jpc-net.jp/detail/21th_productivity/activity000730.html