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プラットフォーム学卓越大学院

私は、京都大学で、幾つかの新しい活動に参加しています。プラットフォーム学卓越大学院は、2021年度からスタートした京都大学らしい新しい取り組みで、情報学研究科、農学研究科、医学研究科、防災研究所、公共政策大学院が連携して新たにスタートさせたものです。そのキックオフ・シンポジウムが10月27日に開催されました。この日は授業があったので動画で参加させていただいたのですが、その挨拶の動画を共有します。


【発言テキスト】

京都大学・公共政策大学院の岩下です。「社会を駆動するプラットフォーム学」キックオフ・シンポジウムの開催をお祝い申し上げます。

私は公共政策の立場からプラットフォーム学卓越大学院にメンバーとして参加をさせて頂いております。私が取り組んでいる公共政策の分野でも、情報学とそれを利用する現場の知恵を融合させるプラットフォーム学への期待は高まっています。

具体的に申し上げますと、公共分野、例えば中央政府や地方自治体の行政事務であるとか、あるいは金融機関による金融取引といった分野で、1960年代ごろから様々な情報技術が導入されてきました。それらは現場における事務合理化に一定の効果はあったわけですが、あくまでも組織内、企業内に閉じた情報システムが中心でした。

1990年代にインターネットが普及し、2000年代には各個人がスマホや様々なデジタルデバイスを手にするようになってから、この情報システムは本質的な変化を遂げたのですが、残念ながら、従来型の情報システムを利用した業務に慣れていた日本の各現場は、中央官庁であれ、自治体であれ、金融機関であれ、その多くがこの変化に乗り遅れてしまったように思います。

日本にはインターネット以前に構築された様々な情報システムが存在し、それらがとりわけ公共分野と金融分野というこの二つの分野に集中して投資をされてきました。しかし、情報システムの中身が変質するとともに、従来のままの使い方ではよくないのではないか、新しい情報システムを活用して、公共分野も金融分野も見直していかなければいけないのではないか、という声が高まってきました。

これこそが、金融ではFinTech、公共ではデジタルガバメントとして注目されている訳ですが、もはやこうした問題は日本の全ての産業で必要とされることと認識されるようになっており、現在ではデジタルトランスフォーメーションという言葉が流行語がとなっている訳ですね。

公共政策大学院で、私は、FinTech概論、デジタルガバメント論という2つの講義科目を持っていますが、各現場におけるプラットフォーム学の実践を考えるための講義とも言えるわけです。

この卓越大学院では、すでに水産業と林業についてのシンポジウムを開催しておられます。こうした、従来情報分野から若干外れていると思われていた産業分野にも、情報技術の恩恵が及ぶようになってきたという意味では、極めて好ましい現象が起こっているということができるでしょう。

私は、政府の規制改革推進会議という会議がありまして、その農林水産ワーキンググループの座長を務めております。農業、林業、水産業のデジタル化についても検討し、古い規制を改革して情報技術を活用した取り組みを実効性のあるものにすべく、議論をリードする立場におります。こういう立場からみておりますと、デジタル技術が伝統的な産業に新しい可能性を見出しているということは極めて大切なことであり、それを最大限に生かしていくことがこれからの日本のために必要なことだと感じています。

現在政府ではこの規制改革推進会議とデジタル庁の活動を組み合わせて、新しいデジタル臨調というものを作ろうとしていますが、こうした活動においても情報学と現場の知恵と経験を融合させることには極めて大きな意義があると考えられます。そのための努力を続けていくという意味で、このプラットフォーム学卓越大学院の今後の研究に大きく期待しております。

引き続き一緒に研究してまいりましょう。どうぞよろしくお願いいたします。


【関連リンク】

「社会を駆動するプラットフォーム学」キックオフシンポジウム

京都大学卓越大学院プログラム プラットフォーム学卓越大学院