ブログ

Blog

暗号資産が引き起こす地球環境問題

暗号資産が引き起こす地球環境問題について、日経FinTech7月号「サステナビリティーへの重責」という巻頭記事にコメントを掲載していただいていました。ずっと前から色々なところに書いている内容ですが、難しい問題なので、なかなか理解が深まらないように思います。実は、取材では、私はもっと厳しい表現を使ったのですが、記者さんがマイルドに修正してくれたようです。

このグラフはDigiconomist.netのBitcoin Energy Consumption Indexですが、9月現在の推定値は159 TWhを超えて更に増加中です。2018年の動きが参考になるのですが、BTC相場が一旦上昇すると、その後下落してもマイニングへの投資は止まらないので、消費電力はしばらく増加を続けます。ちなみに、日本の最終電力消費は2019年で927.3 TWhなので、その 1/6 を超えていることになります。 

日本でも2030年のCO2排出量を2013年度比46%削減する、という目標が掲げられています。地球環境問題に真面目に向き合うのであれば、暗号資産によるエネルギーの浪費を放置はできないでしょう。「再生エネルギーでマイニングすれば無問題」みたいな能天気なコメントもありますが、そもそもどこの誰がマイニングしているかも不明なのに、マイニング業者にそんな制約を掛けることが可能とは思えません。

「PoWが問題なので、PoSに移行すれば良い」という意見も、現実的な解にならないでしょう。ビットコインは暗号資産の流通総額の過半を占めますが、ビットコインを巡る利害関係者の顔ぶれから考えて、PoWを放棄できるはずがありません。イーサリアムですら、PoSに移行することは難しいでしょう。多くの暗号資産が売りにしている「中央のない構造」は、この種の意思決定には不向きなのです。

暗号資産は、触ったり眺めたりできませんし、満期に償還されるわけでも、利益の配当が受けられるわけでもありません。そんな「持ち主になんのメリットももたらさない資産」が人気を集めるのは、今後も長期的に値上がりを続けるという期待があるからです。しかし、暗号資産が値上がりを続ければ、マイニングによるエネルギーの浪費が拡大して、地球環境問題が深刻化します。地球が有限である以上、暗号資産が未来永劫値上がりを続けることはないのですが、それが人々の期待に織り込まれるには、もうしばらく時間がかかるのかもしれません。