東証の記者会見を見ての個人的な感想は、もっと被害を小さくできたのではないか、ということだ。もちろん、本当に現場で何が起こっていたのか分からないから、勝手な憶測に基づくものだけれど、東証が一日動かなかったということは、どれだけ大きなショックを与えたことか。PTSなどの代替市場を育成せず、東証一極集中を進めた割に、東証には必死で市場を開こうという意思が感じられなかった。
朝のタイミングで、価格情報のデータベースに異常があることを把握し、証券会社と相談して停止を決めたと記者会見で話していたが、再起動して正常なディスクを生かして起動させるチャンスはあったような話しぶりだった。先行入力した注文がクリアされてしまうことを除けば、スタートできた可能性は高いのではないか。証券会社だって、取り次いだ注文がやり直しとなれば顧客に迷惑を掛けたかもしれない。でも、日本の金融市場の信認を失うコストを賭してまでも避けるべきトラブルだったのか。そもそも、全ての取引がキャンセルになってしまったのだとすれば、それに代えて何を守ったというのだろうか。
日本の信認の低下は、日本全体で負うことになる。東証は、もし後場から市場を再開できるなら、全力でそうするべきだった。防げたトラブルのコストに比べて、失った信認の方がはるかに大きい。本当にそうするしかなかった、と納得できる内容の記者会見ではなかったと思う。
(日本経済新聞、10月2日) facebook上で紹介した記事