Advanced Studies of Financial Technologies and Cryptocurrency Markets という書籍の、Bitcoin’s Deviations from Satoshi’s World という章を執筆しました(pp 101-116)。ビットコインが普及、拡大する過程で、サトシ・ナカモトの原論文が描いていた世界からどのように乖離してきたのかについて論考したものです。以下に、概要を転載します。
Abstract
After several years of the proposal and implementation of Bitcoin by Satoshi Nakamoto, people in the world were enthusiastic about crypto-assets. However, the market prices of crypto-assets are too unstable to use as a payment method. After many cyber-attack incidents, the confidence in the security of crypto-asset exchanges has also been compromised. Satoshi proposed Bitcoin to realize anonymous payment to protect individual privacy. Actual crypto-assets have changed from the original concept. The main reason for this deviation was the reality that ordinary investors cannot manage their secret keys securely. In this chapter, the reasons for this deviation are investigated.
この本はオンラインでは7月末から購入可能になっていたのですが、タイミングを把握していなかったので、お知らせするのが遅くなりました。コロナのために私が研究室に行けなくなっていたのが悪いのですが。
この本は、編者筆頭のLukáš Pichlさん(国際基督教大学 教養学部アーツ・サイエンス学科 上級准教授)が、精力的に編集作業をされており、私の原稿に対しても親切なコメントを幾つも頂いていました。ところが、Pichlさんは、編集作業の最終段階でもあった今年4月に、若くして脳溢血で急逝されてしまいました。私とはオンラインでのお付き合いだけでしたが、とても残念なことでした。
その後、多少の停滞はあったものの、無事、Pichlさんの最後の仕事として本書が刊行の運びとなったことは良かったと思います。