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内閣府、法務省、経産省による「押印についてのQ&A」

内閣府、法務省、経産省による「押印についてのQ&A」が公開された。この議論は20年前から変わっていないので、この20年間に掛かった押印関係の国民負担の総額が幾らだったかを考えてしまう。何故、もっと早くに、こうした当たり前の法律解釈が周知されなかったのかと思う。

今回の一連の動きはコロナ対策の緊急措置という面があるが、業務において対面、書面、押印が必須という旧弊を如何になくしていくかは、これからも続く長い戦いだと思う。もっとも、こうした旧弊が残っているということは、そこに業務合理化の対象があるということに外ならず、テレワークや働き方改革に書面・押印の廃止を加えれば、日本企業、日本社会がこれからより効率化し強靭になる余地があったのだと考えることもできるだろう。

細かいことだが、この文書の最後に、次の問いがある。

問6.文書の成立の真正を証明する手段を確保するために、どのようなものが考えられるか。
..
(b) PDF にパスワードを設定
(c) (b)の PDF をメールで送付する際、パスワードを携帯電話等の別経路で伝達
..

ここで、(c)に「別経路」と書いてある点に注目してほしい。決して、パスワードを同じメールアドレスに別送する、いわゆるPPAPではないので、そこをもっと強調してほしかった。多分、この文書が意図したのは、携帯電話のアドレスが別アドレスであるとか、電話の音声でパスワードを伝えるといった行為だったと思う。

そもそも、今時の「携帯電話」はスマホだから、パソコンと携帯電話で同じメールアドレスを使うことも少なくない。そうなると、携帯電話を使っても2経路認証にはならない。個人のスマホを仕事に使っていいのか云々、という議論もある。どうすれば2経路認証が確保できるかは結構難しいので、ここで変な例示はしないほうが良かったと思う。

どの程度重要な契約か、どの程度厳密に「文書の成立の真正な証明」が必要かを考えるのは、普通の人にはちょっと難しい。基本的には、よほど重要または機微な案件でない限り、暗号化していない普通のPDFファイルを関係者が共有すれば足りるはずである。この文書が公開された結果、オフィスで、本来不要なPPAPもどきの作業がこれ以上増大しないことを祈っている。