こんな記事が掲載されていた。
新型コロナ、日本独自の「要請」対応が奏功-緊急事態全面解除迫る
(Bloomberg日本語版、黄恂恂、Lisa Du、リーディー・ガロウド、2020年5月23日 7:00 JST)
これは、この英文記事の日本語訳である。
Bloombergの記者が日本の新型コロナ対応について取材した記事で、欧米の視点からはこう見えるのかな、という印象を受けた。英文記事の筆頭著者のLisa Du (Bloomberg News in Tokyo) は、主に米国で教育を受け、キャリアを積んできたジャーナリストである。
「保健所が感染者との濃厚接触者の追跡に動いたことが効果を発揮したとの見方がある。北海道大学公共政策大学院の鈴木一人教授は、日本の方法は「アナログで、シンガポールのようにアプリを使った追跡ではない」が、「とても有効だった」と話す。」
これは素直に評価すべきところだと思う。日本人の間では、保健所の調査に協力する意識がとても高いし、非協力的な人は社会的に批判される。社会全体の公徳心の表れとも言える。批判的に見れば、個人の権利をないがしろにするムラ意識だという人も居るだろうが、感染症の防止にはそれが有効だったということだろう。
「英キングス・カレッジ・ロンドンの渋谷健司教授は、感染者の追跡方法にも改善の余地があると指摘。「時間のかかる聞き取りによる追跡は、小規模の地域限定的な感染には有効」とする一方、「記憶の偏りがある上、アプリで接触者や利用施設を特定するよりは効率的でない」と答えた。」
この指摘はどうだろうか。確かに、欧米のような大規模な感染が起きたら、一件一件聞き取り調査をしていたのでは間に合わない。アプリで追跡したほうが効率的ではあるだろう。しかし、アプリや個人情報を収集するシステムがないからこそ、調査に協力しなければならないという意識が高まる面もありそうだ。日本ではそう簡単にアプリで調査できるようにはならなそうだけれど、だからといってそう悲観したものでもないだろう。
保健所の収集した情報を集計したりするのに、もう少し情報技術を使ったほうがいい面は確かにある。しかし、シンガポールや、あるいは中国、韓国のような、システム的に個人を追跡する仕組みは日本では拒否反応が強そうだし、それが万能という訳でもない。現実問題として、我々は、現在の体制のまま、この秋にも危惧されている第二波を迎え撃つしかないだろうし、それが再び有効に機能することを期待するしかないと思う。