コロナ前の世界では、公務員は真面目にルール通りに仕事を進めるのが正しいとされた。コロナ後も原則は変わらないけど、とはいえ、変わってしまった現実に対応していくために、公務員といえども、時には柔軟な判断をする必要がある。前例踏襲ではなく、変化に柔軟に対応していくことも求められる。また、そうした対応を可能にするために、ITを使いこなし、民間におけるイノベーションに学び、自ら実践する意欲と能力が必要とされるだろう。
コロナ前から、公務員を志望する学生たちに、これからの時代におけるイノベーションの重要性を説いてきた。しかし、現実はなかなか変化しないものだ。「先生はイノベーションが大事というけれど、公務員の現場は十年一日ですよ」という声を聴くこともあった。理想と現実は違うし、考えるべきことも部署や立場によって異なるから、それも仕方ないかと思っていた。
しかし、コロナで世界は変わった。コロナと共に生きる時代においては、従来の常識にとらわれていてはいけない。公務員が服しているルールや慣習は、全てコロナ前の世界で作られたものだからだ。例えば、民間企業では在宅勤務が基本形となり、誰もが電子会議システムで会話する時代に、公務員の多くは未だにオフィスに通勤し、対面の会議を続けているのも問題だ。政府や自治体が、社会の変革についてこられなくなっているのが心配でならない。
これから我々は、社会、経済に多くの深刻な課題を抱え、険しい道を歩まなければならない。でも、悪いことばかりでもない。空気を読む日本の職場では長年変えられなかったルールが、この1か月で大きく見直されている。公的な部門が持つ硬直性が、このメリットを減殺してはならない。できることなら、公的部門が先頭に立つ形で、新しい時代の変革を推進して欲しいと思う。