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銀行に支店は必要か

なにも、全ての銀行がブランチバンキングを止めてデジタルバンクに移行すべきだ、という極論を言っている訳ではないので、安心してほしい。そういう方向での変化は徐々に進むだろうけれど、各地に置かれた銀行の支店は 対法人および対個人のビジネスの拠点として、当面の間は活用され続けるだろう。

普通に銀行と取引をするときに、個人であれ法人であれ、銀行名、支店名、預金種別、口座番号、口座名義といった情報が必要となる。だが、このうち銀行と支店と口座という階層構造は必要なのだろうか。

この構造は、元々手作業で銀行業務を行っていたことの名残りである。しかし、今時は銀行の支店ごとに手書きで預金の帳簿をつけている銀行は存在しないだろう。どの銀行でも、全ての支店の口座がシステムのデータベースで一括管理されているはずだ。だとすれば、今は別にこんな階層構造など必要ないように思える。

この階層構造は、かれこれ50年も前に、全国地方銀行協会データ通信システム(現在の全銀ネットの前身)が開発された時に決められたものだが、それが長年にわたって維持されてきた。当面も変わる見込みはない。

代替案がないわけではない。欧州で使われているIBAN (International Bank Account Number) は、国際的な送金を効率化するために策定されたISOの国際標準であり、その付番ルールに基づけば、日本の金融機関コード、支店番号、口座番号をそのまま並べることで、ひとつの番号として利用できる。日本でも、1990年代に、その採用が議論されたことがあったのだが、業界として同意を形成することができなかった。現在、IBANを利用している国は69か国に達するが、日本では利用されていない。

誰かに銀行の口座番号を知らせるとき、あるいは、インターネットバンキングやATMで振込先を指定するときに、この込み入った構造を利用しなければならないことに、正直うんざりしている。聞いたこともない地名の支店や、ネットバンクが多用するバーチャルな支店名を、50音順に検索して入力しているのって、本来は不要な手間なのではないか。

最近、銀行の支店の改廃も激しいけれど、支店内支店とか、同一支店が同じ店舗をシェアするとか、物理的な支店からは乖離した単なる番号として取り扱われているように思う。そんなに、支店という概念が大事なのだろうか。

パソコンや家電品を買ってユーザー登録をするときに、どの店で買ったかとは聞かれない。物理的な店舗が意識されるのって、自動車ディーラーか携帯電話のキャリア直営店くらいではないか。

もちろん、基本中の基本の外部要件だから、システムの構造を見直すとなれば、またとんでもないコストが掛かるだろう。でも、システムの中身はそのままに、ユーザーとのインターフェースだけ、もっとスマートにできないだろうか。銀行は、自分の業務上の都合を顧客に押し付けているのではないか。支店単位での顧客管理を前提とした約款や書面を、もっと顧客本位なものに変更したほうがいいのではないか。