標記のイベントで基調講演を担当しました。私の講演概要と講演資料は以下です。
「トラストとトラストレスの狭間で」 京都大学 公共政策大学院 教授 岩下 直行 氏 講演資料(3.59MB) <概要> ビットコインは伝統的な暗号技術を応用していますが、使い方が一風変わっています。例えば、デジタル署名では、あえてPKIを使わず、公開鍵をそのままアドレスに使用することで、信頼できる第三者機関を置かない、センターを置かないというポリシーを貫いています。その特性は、「トラストレス」という言葉で表現されます。これに対し、信頼できる中央機関を利用する従来の仕組みは「トラスト」の世界と呼ばれます。 コインチェック社のNEM流出事件を巡って、多くの人々は、流出したNEMの在り処が分かっているのに、それを取り戻せないことを不思議に思っています。銀行預金のようなトラストの世界であれば、盗まれた大金が預金口座に隠されていれば、そのお金は差し押さえられ、最終的には盗まれた人に返還されます。しかし、今回流出したNEMは、そうなっていません。NEMはビットコインと同じく、トラストレスの世界にあるからです。 本講演では、トラストレスの世界とトラストの世界とを繋ぐ存在ともいえる仮想通貨交換業者に焦点を当て、仮想通貨を巡る様々な問題を考えます。仮想通貨への国際的な規制の在り方やICOの問題などを含め、今後のあるべき姿を探っていきます。 |
全体プログラムと開催趣旨を以下に転載します。私以外の講演の要旨、資料は、JNSAのサイトからご確認ください。
【開催趣旨】 我が国の施策としてIoT/BD/AI等を駆使した超スマート社会(Society 5.0)といった構想が検討されています。この超スマート社会は、多様な人・モノ・サービスなどが繋がることにより新しい価値が創造と、社会の効率化が目指された社会と言えます。この時、膨大な数のIoTデバイス等が「繋がることによる新しい価値の創造」のためには、何らかの信頼と信頼関係の構築、すなわちトラストの構築が必要になります。このトラストの構築に欠かせない技術が、暗号技術/公開鍵暗号技術、そしてPKIだと言えます。PKI day 2018では、以上を踏まえ「超スマート社会(Society 5.0)におけるトラストのあり方」をテーマに、今後の社会において暗号技術/公開鍵暗号技術/PKIが果たすべき役割を議論します。 |