昨日の福岡G20のセミナーでのラガルドIMF専務理事の発言について、以下のような報道が出ています。日本語版は下の英語記事から翻訳したものでしょう。
フィンテックで「金融システムに混乱も」、IMF専務理事が警鐘(ロイター日本語版、 6月8日)
私は福岡の会場で直接この講演をお聞きしていたので、ちょっとこの報道には違和感を感じました。ラガルド専務理事のスピーチは、もっとフィンテックをポジティブに評価したものであったからです。
専務理事のスピーチは、IMF自身のサイトで日本語版が読めますから、是非こちらを読んだうえで、記事がポイントをついているかどうかを判断していただけるとよいと思います。
確かに、「金融環境の大きな混乱のひとつ」(A significant disruption to the financial landscape)が、大手テクノロジー企業に起因する可能性が高いとは指摘しています。しかし、この混乱とは、既に全世界で生じつつある古い金融と新しい金融との競争、新しい金融への規制が及ばないことなどを指しているのだろうと私は考えます。GAFAによって金融危機が引き起こされると警告しているわけではないのです。
ラガルド専務理事は、その一方で、「フィンテックの潜在力を活かして金融の包摂性を高め、一層の発展を実現」するために、「暗号資産、ノンバンクのフィンテック仲介機関、データ・ガバナンスの面で、国ごとに異なるアプローチを調和させることが非常に重要です。」とも述べています。そして、「石橋を叩いて渡れ」という日本のことわざを引用して、慎重に変革を進めていくべきだと結んでいるのです。
会場では、この「石橋を叩いて渡れ。でも安全が確信ができないなら渡るな」の一節で、笑いが漏れました。でも、実際には、渡らないでいることは難しいことは、聴衆も理解していたと思います。
問題は、事態が進展してしまう前に、「国ごとに異なるアプローチを調和させること」ができるか、ということでしょう。専務理事のスピーチは、そのための各国金融当局の協調を鼓舞するものであったと思います。