楽天ペイから「Suica」発行可能に、2020年春から(engadget日本版、2019年6月5日)
世界的には全く特殊なFeliCaドミナントな非接触決済インフラを豊富に持つ日本では、結局はタッチ決済でないとユーザーに受け入れられないから、QRではなくてタッチ決済を推進するのは当然のことだろう。とはいえ、加盟店側の仕組みも複雑に入り組んでいるし、この新しい連携も、安定的に稼働させていくのは容易ではないだろう。楽天もJR東日本も、こうした連携に慣れているようには見えない。APIのインターフェースから作っていくのだとすると、時間がかかるのも仕方ないことだろう。
私は現在、Apple WatchでSuicaを使っているが、これはSuicaをApple Payで取り込んだもので、加盟店側はQUICPAYのインフラを使って支払いを受けている。別途モバイルSuicaのアプリからクレジットカードでApple Watchにチャージもできるから、この記事で利用者の利便性向上として描かれていることは、既に出来ているとも言える。
歴史的に考えれば、元々はSONYがEdyを作り、JR東日本にサービスを提供する予定だったのだが、JR東日本が独自路線をとり、Suicaが誕生した。残されたEdyは決済サービスだけでは経営が立ち行かず、楽天に引き取られて楽天Edyとなったが、これもまた伸び悩んでいた。
今回、楽天がEdyを楽天ペイに統合し、そこにSuicaを乗せるということは、EdyとSuicaとが20年の歳月を経て再統合されたようにも見える。とはいえ、実際には各々にしがらみがあるから、楽天ペイがSuicaと完全に統合される訳ではない。他地域の交通系との相互利用やJR東海を通る時の処理など、簡単には解決できない問題もありそうだ。
もちろん、こうした連携によって利用者の利便性が増すのであれば、それはとても良いことだ。しかし、仕組みが益々複雑なものとなるので、長期的に安定して発展していくことができるか、不安は残る。新興国の成功事例がもっとフラットな仕組みであったことを考えると、先行したが故に利害関係者を多く抱えてしまった日本の現状は、後発の利、先発の不利を地で行くようでもあり、必ずしも楽観できないと思う。