日銀下関支店長 岩下直行
先週、部屋で育てている蘭の話を書いたが、それ以外に観葉植物も少しだけ育てている。殺風景な単身赴任の生活に少しでも潤いを与えようと、近所の花屋で買ってきたものだ。買った当初は小ぶりでやや貧弱だったパキラとクワズイモは、一年半で随分成長し、なかなか立派な枝ぶりを見せるようになった。一般に、観葉植物の管理はそれほど難しいものではない。花を咲かせたり、実をならせたりするわけではないから、植物にあまり負担をかけないのだろう。明るい場所に置き、普通に水やりをしているだけで、次々に新しい葉を生やし、スクスクと育ってくれる。
パキラは中南米原産のポピュラーな観葉植物で、古い葉の下から新しい枝と葉が次々に生えてくる。新しい枝は、先端に小さな六枚の葉を下向きに付け、傘を軽くすぼめたような形状で、前から生えていた古い葉の間を突き抜けてニョキっと伸びる。そして、その先端が周囲の葉の上に突き出たら、今度は傘を広げるように新しい葉を広げるのだ。同じ幹から伸びている枝同士が、光と空間を求めて先陣争いをしている様子が面白い。
この植物は特に強い日光を必要とするものではないから、後から生えてきた葉が上に広がっても、下の葉は元気に成長している。ただし、あまりに混み合うと風通しが悪くなって葉が傷むので、時々ハサミを入れて枝を整理する必要がある。その際、どの枝を切るかはちょっと悩ましい。古くから生えている葉は大きくて立派だが、所々に傷みが目立つ。かといって、きれいな若い葉だけを残すと、ボリュームが保てない。各々の枝を見比べながら、全体のバランスを考えてハサミを入れるようにしている。
クワズイモは、日本にも自生するサトイモの仲間で、その名の通り、根茎(こんけい)の部分は食べられない。シュウ酸カルシウムを含み、毒性があるためだが、鉢植えで部屋に飾っておく分には特に問題はない。この植物も、新しい葉の生え方が面白い。こちらは、基部から長い葉柄(ようへい)の先に一枚だけ葉がついたものが何本も生える。その生え始めは、葉がクルっと丸められた細長い筒状のものが基部から飛び出してくるのだ。その不思議な筒がしばらく伸びると、勝手に筒が開いて、一枚の立派な葉が出現する。開いたばかりの葉は鮮やかな黄緑色で、自然の造形にちょっと感動する。この植物は葉に害虫がつきやすいので、時々、葉の裏表をぬらした布で拭き掃除するようにしている。
観葉植物というのは、葉が生えた状態の植物を観て楽しむものという意味だろうが、このように葉が生えるプロセスを観察しても楽しいと思う。
(2011.4.20日 山口新聞掲載)
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