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仮想通貨保有者360万人の全てがgeekにはなれない

仮想通貨への規制が過剰になることを憂う記事を読みました。私はこの著者と一緒に仕事をしたこともあるので、彼の理想とする世界への情熱や希望はよく理解しているつもりです。とはいえ、今の技術を前提とすると、ちょっと無理難題をおっしゃっている部分がいくつかあり、現実の政策を考えていくときには、なかなか理想論どおりにはいかないように思います。

特に記事の最後にあるカストディ分離論ですが、今の技術でも担い手を分離はすることができますし、信託などの仕組みを使えば倒産隔離も可能かもしれません。しかし、その場合、カストディに預ける仲介業者のセキュリティは、ブロックチェーンで守ることを想定しません。そこは、現在のインターネットバンキングやインターネット証券取引のような、普通のRDBで管理することになると思います。だから、リスク管理やシステムのセキュリティが必要になります。

最終投資家が安全に秘密鍵を管理できるのであれば、パブリックブロックチェーンに資産を置けばいいのであって、そもそも交換業者に預ける必要もなく、コインチェック事件やマウントゴックス事件の被害は受けません。問題は、そのような投資家ばかりではないということです。360万人が全てgeekにはなれないのです。

ブロックチェーンが安価に安全なシステムを提供できるのは、秘密鍵の管理という大事な部分を外出しにしているからで、そこを誰かに代わって守る人は、誰かのお金を預かる人と同義です。残念ながら、そこを自由にしたままだと、預かる立場の人が十分な対策を講じないという事実が分かってきてしまいました。

仮想通貨交換業者が大きな金額の資産を業として預かる立場であるならば、それにふさわしい対策は講じてください、とお願いしているのが現状です。360万人の利用者がいる以上、そこは現実の問題として、きちんと対処していかなければならないと思います。