あまり話題になっていなかったと思うが、ベトナムのコロナ対策が凄いという記事がWSJに載っていた。中国とは陸続きの隣国だし、感染が増えても不思議ではない国なのだが、実際の感染者は 270人にとどまる。徹底的にPCR検査を実施し、感染の疑いのある者や濃厚接触者を直ちに隔離するといった強権的な対策で感染を抑え込んだという。死者はいまだにゼロ。感染者もほとんど軽症で恢復し、現患者は50人程度にまで減っているという(図は上から、累積感染者数、現患者数)。
ベトナムはPCR検査を 26万件も実施しているが、その陽性率は 0.1% に過ぎない。日本の陽性率 8%(全国ベース累積、感染者 14,571人、検査 181,527件)とは2桁違う(以上の計数は、www.worldometers.info/coronavirus/ をベースに5月3日時点のものに更新した)。
感染者が接触したであろう全ての人を突き止める「接触者追跡」を基本とする。保健当局は政府ウェブサイトや新聞、ソーシャルメディア(SNS)で感染者の行動の詳細(例えば、どこの飲食店を訪れたか、市場にどのくらい長く滞在したか)を広く公表し、接触があったと思われる人は名乗り出ることを促している。
WSJ記事のこの部分を読むと、ベトナムもスマホを利用した行動追跡と、情報公開による自己申告で感染の疑いのある先を絞り込み、少しでも疑いがあれば隔離を徹底したらしいことが分かる。ピーク時の隔離者は 8万人に達したという。一人の陽性者を見つけ出すために、平均300人が隔離されたわけだ。そのほとんどは陰性だったわけで、強権的な政府だからこそできた話だと思う。
日本と比べて、PCR検査数自体は大差ないが、その使い方が違うということだろう。PCR検査能力にばかり関心がいくけれど、感染症対策としての行動追跡と強制的な隔離をどれだけ積極的に実施するか、という視点も重要だ。日本の弱みはまさにそこにあると思われるからだ。日本では同じような強権的な対応はとれないが、ではその代わりに何を改善すべきかを議論していかなければならない。