9月25日に開催された金融審議会総会(第42回)・金融分科会(第30回)合同会合の議事録が公開されました。以下に、私の発言部分を転載します。
○岩下委員
どうもありがとうございます。今日の3つのトピックを拝見させて頂きまして、若干気になったことで、大きく言うと1つの点だけですが、申し上げたいと思います。
この8月に取りまとめられた「利用者を中心とした新時代の金融サービス~金融行政のこれまでの実践と今後の方針~」に書かれている内容は大変望ましいことだと思うのですが、気になったのは、このタイトルに、「利用者を中心とした」と書いてある割に、中にはあまり利用者のことが書かれていないように思うのですね。ここで言う利用者とはどういう人なのだろうかと。確かに、部分的には、例えば金融リテラシー教育の向上という、これまでもご発言があったようなことについての指摘があったわけですが、まさに多種多様な利用者の方がいらっしゃいます。その一方で、今回の「金融制度スタディ・グループ」の報告書の中では、例えば、金融技術革新を前提としたデジタルで一元的な様々なサービスを提供する業者がいて、それを利用する利用者がいてという状況を想定した形でルール整備を行っていこうという話をしているわけです。そう考えると、どうも実際のこれまでどおりの紙とペンでやってきた金融の世界とは別の新しい金融の世界が大きく広がっているのだろうし、これはまさにSociety5.0等で言われる金融のこれからの伸びしろの部分にあたると思うのですが、そのような部分についての利用者をあまり積極的には想定せずに、ともすれば弱者というか、これは業者だから当然仕方がないと思いますけれども、デジタルデバイドをされてしまっている方々に配慮した形になってしまう。もちろんそのような方々に配慮するのは当然ですが、アドバンストなことをやっていらっしゃる方々にも配慮した、活用される彼らに自由に様々なことをやってもらうためにはどうあるべきなのかという視点が、このような議論のときにはどうしても欠けてしまう感じがいたします。
例えば、典型的には、「市場構造専門グループ」の中で今後議論することになっております東京証券取引所の一部、二部、ジャスダック、マザーズ等の統合という話がございます。ただ、今どきの株式投資を行っている個人であれば、多くの場合はネット取引が中心ですし、そのような場合は自由に自分たちでスクリーニングをして、時価総額、配当利回り、PER、PBRなどを自由に選択しながら、そのグループの中で投資を決めるということは割と当たり前に行われていることであります。そうすると、多分英語で開示しなくてはいけないといった問題がまた別の議論としてありますが、どのグループに入りますかということは、供給者側の論理であって、需要者側はあまり気にしていないような気がします。そう考えると、実際に金融サービスを利用している利用者が、多様にはなってきていますが、多様になってきているうちの従来型の利用者の姿は非常によく見えているけれども、新しい形での利用者の姿があまり意識されていないのは、もしかしたら今後の課題なのではないかと考えた次第です。その意味では、この資料の中、あるいは今後の議論の中で、是非そういう視点も入れて頂いて、せっかく新しい技術を利用した形での様々な制度の整備を行うわけですから、それを積極的に利用してくださる方々にも目を向けるべきではないかということを指摘させて頂きたいと思います。