そもそも株でも為替でも、相場が全て合理的に説明できるわけではないし、キャッシュフローを生まない暗号資産の価格は人々の期待のちょっとした変化で簡単に振れるので、クリアカットに説明したとしても、それは所詮は仮説にすぎない。
そう断ったうえでのことだが、現在の相場は4月のTetherへのNY州司法当局による問題点の指摘から、Tether/Bitfinex陣営が正面突破で相場吊り上げに動いたことが大きいと私は考えており、4000ドルから12000ドル超まで上げたのち、8000ドルに落ち着いた訳だ。ETHなどとの相対価格、TetherのMarketCapが4位になったことなど、BTC-Tether独り勝ち相場の周りには、そうした動きの状況証拠が色々と散らばっている。
多分、8月29日の下落は、直前のTetherの回収がきっかけだったと思われる。では、今回、9月25日の相場下落の直接の引き金は何だったのか。今回は、Tether側はMarketCapを積み上げている局面だったから、直接のインパクトは与えていない。確かに、9月23日のハッシュレートにはスパイクがあるけれど、それは一瞬で復元しているし、難易度は過去最高水準に上昇したままだ。
マイニングの電力消費も、Tetherによる吊り上げも、どちらも合理的に考えれば持続可能ではない。投資家の多くは、どこかでゲームから抜けるタイミングをはかりつつ、音楽が鳴っている間はダンスを続けているという状況だと私は理解している。
そうだとすれば、水鳥の羽音に驚いた平家軍のように、ハッシュレートの急落に何らかのサインを感じて撤退する投資家が出てもおかしくはない。それでも、ビットコインの相場は4月の倍はあるのだ。他の暗号資産が4月の水準に戻ったのに比べれば、まだ旨味があるのだろう。
とはいえ、今後もダンスを永遠に踊り続けることはできない。どこかで、持続可能な路線に切り替えることが可能な仕組みならよいのだが、残念ながらそれは難しいだろう。当面は、こうした状態が続くのだと思う。