ブログ

Blog

暗号資産の相場が急騰した

2019年4月2日午後1時半頃、暗号資産の相場が急騰し始めた。BTCの相場は、あれよあれよという間に年初来最高値を更新して、僅か1時間で4,800ドルを超える水準に達した。その後、若干下落したものの、午後10時現在、前日比で+15%、4,780ドル程度の水準で推移している。後付けで相場の解説をしても仕方ないが、何が起きたかを理解するために、幾つかの情報を整理してみよう。

4月2日のBTCの対ドル相場推移  (出典)coinmarketcap.com

こうした上昇は、BTCに止まらない。暗号資産の流通残高が上位のものがほぼ全て、一斉に10%前後の相場上昇をみせた。

4月2日の主要暗号資産の相場推移 (出典)coinmarketcap.com

この結果、暗号資産の流通総額は$160Bを超え、こちらも年初来の高値を更新した。とはいえ、2018年11月の暴落で$210Bから$100Bまで低下していたものが、半分程度戻した状態にすぎないのだが。

最近一週間の暗号資産の流通総額 (出典)coinmarketcap.com

このところ、暗号資産の流通総額は、比較的堅調に推移していた。他方、主要な暗号資産であるBTC、ETH、XRPといった銘柄は、精々横這い程度の動きだった。この結果、暗号資産の流通総額に占めるBTCのシェア(BTC Dominance)が低下し、ほぼ50%となっていた。今日の高騰の結果、 BTC Dominance は、一時52%を回復した。BTCが横這いなのに、暗号資産全体が高騰したのは、以下のチャートで「その他」に分類される雑多な資産が値上がりしていたからであることは以前もこの欄で指摘していたが、今日の暴騰は、こうした得体のしれない暗号資産から、上位のBTCなどに資金が戻った動きと理解できる。

最近一週間の暗号資産流通総額シェア(出典)coinmarketcap.com

2018年夏に暗号資産の相場が比較的安定した局面以降では、BTC Dominanceは 50%を下限として推移してきた。2018年11月に暴落してからも、暗号通貨間の相対的な関係はあまり変わらなかったが、ここ最近は「その他」の上昇が目立っていた。逆に言うと、主要な暗号資産の価格が不自然に抑えられていた状態にあった。

そうした現象の背景として囁かれていたのは、暗号資産の先行きを不安視して、主要銘柄を大きく売り持ちする投資家の存在であった。市場の噂というのはポジショントークが多いのだが、仮にそういう投資家が存在したとすれば、なかなか起きない相場下落に嫌気してポジションを解消したのが本日午後の高騰の原因であるとの説明は、そんなに違和感はない。いかにもありそうな話だからだ。

それでは、暗号資産の先安観は解消されたのか、というと、それは何とも言えないだろう。一本調子の上昇ではなく、僅か1時間の間に急騰した後、横這ったチャートは、多様な相場観を持つ投資家の売買により価格を発見していく、一般的な金融市場の動きとはかなり異なる。何やら、シナリオに描かれたような動きであり、ここから長期的な相場にかかる情報を見つけ出すのは難しいからだ。

むしろ、長い目で見たBTCの相場については、2017年末から発生したスケーラビリティー問題の再燃をうかがわせる兆候がみられることが気になっている。取引量の急拡大とブロックサイズの上限への張り付きが続き、足元の手数料が若干上昇してきている動きをみると、またあの取引の渋滞が発生するのでは、という懸念が消せない。しかも、ハッシュレートは下落した水準からまた戻りつつあり、難易度もつい最近上昇した。今程度の相場で、BTCのメインチェーンにトラブルが生じるようだと、投機対象としても、暗号資産の有用性に疑問がつく。売りたいときに売れない投機対象なんて、持っていても仕方ないからだ。さて、BTCを始めとする主要暗号資産は、こうした懸念を払拭できるだろうか。

増加する取引量 (出典)www.blockchain.com
ハッシュレートは持ち直し気味 (出典)www.blockchain.com
採掘難易度も再上昇している(出典)www.blockchain.com
取引手数料 は落着いているようだが (出典)www.blockchain.com