投資で大損した中国の若い母親が自殺した本当の理由 政府は見殺し? P2P融資の規制強化で破綻者が続出(JBpress、2019.3.5)
最近、中国の金融関係者と議論した際に、「何故日本ではP2Pレンディングが増えないのか」と尋ねられた。「日本では銀行が融資を担い、金利水準も低いので、P2Pレンディングへの参入が少ないのです」と説明したが、基本はやはり彼我の規制の違いだろう。
中国のP2P金融商品は、スマホを通じて簡単に投資でき、そのすそ野が広く広がっている。日本に留学している中国人留学生から、「こうやって投資するんですよ」と教えてもらったこともある。有利な投資商品を広く国民に提供したという意味で、それなりの役割を果たしたP2Pだが、記事にある通り、十分な規制が行われず、詐欺的な行為も横行していたという。
中国のアリペイやウィチャットは、予防的な事前規制を行わなかったから成功したともいえる。他方、事前規制がないということは、詐欺的な商法の被害者が出るまでは当局は動かないということだ。こうした被害者の犠牲のもとに、中国の新しい金融サービスの成功があったといっても過言ではない。それは、金融規制に対する基本的な考え方の問題だと思う。
この記事にあるような、国家への信認の喪失が今回の事件を引き起こしたという解説が本当かどうかは私には分からない。ただ、過去の中国の投資家が、投資の失敗に心を折ることなく、将来の成功を信じて「また稼げばいい」と考える傾向があったのは事実だ。それは急速な右肩上がりの成長のもとで、やり直しがきく社会であったことが大きいのではないか。現在の中国はある程度豊かになり、その成長率目標は再び引き下げられた。日本でも、高度成長期の終焉とともに、悲観論が世を覆ったことを思い出す。彼らの金融規制の在り方も、また変わっていかなければならないのかもしれない。