日銀下関支店長 岩下直行
明後日、2月18日は満月だ。もし晴れていたら、真夜中の中天に高くかかる満月をみることができる。今回は、この満月の高度の変化について考えてみよう。
季節によって太陽の高度が変わることは誰もが実感しているだろう。夏の太陽は真上から照り付けるが、冬の太陽は正午でもあまり高くは昇らない。同じように、月の高度も変化する。ただし、こちらは太陽ほど簡単ではない。月が天に描く軌道は、季節だけでなく月齢によって複雑に変化するからだ。
とはいえ、満月に限っていえば話は簡単だ。満月の高度は、太陽と正反対の季節変動をする。つまり、太陽高度が高い夏には満月の高度は低く、太陽高度が低い冬には満月の高度は高いのだ。
これは、天体の位置関係を考えてみれば納得できる。満月は、太陽、地球、月の順に、三つの天体がほぼ一直線に並んだ状態のときに見える。一方、季節は、地球が傾いた地軸のどちら側を太陽に向けているかで決まる。
夏には、地軸は太陽の側に傾き、北半球の地面には太陽の光が真上から差し込むので暑くなる。このとき、満月は地球をはさんで太陽の反対側にあるから、地球が180度自転した深夜の姿を考えれば、月は冬の太陽のように低い空にみえることになる。
逆に冬は、地軸は太陽の反対側に傾いている。昼間の太陽高度は低く、地上は寒くなる。その分、夜に満月が出れば、その高度は夏の太陽のように高くなるのである。
私は、一昨年に山口県に転勤してきてから、自宅のベランダでよく夜空を眺めている。空気が澄んでいて、地上の光も少ないので、関門海峡を臨むベランダからは、高い建物にさえぎられることなく、様々な高度の月や星を楽しむことができる。とりわけ今の時期は、オリオン座や双子座のような分かりやすい星座が多く、夜空を楽しむには絶好の季節だ。
星座をナビゲーションする道具が充実してきたことも嬉しい。私が愛用しているのはiPadに組み込んだスターウォークというアプリだ。iPadを空にかざして見たい方向に向ければ、内蔵された電子コンパスと傾きセンサーが反応して、その方向の空の画像を映し出し、星の名前と星座の絵がそれに重なる。iPadのテレビCMで、「魔法みたい」というキャッチコピーとともに流れていたのが、このアプリを使って星を眺めるシーンだった。
画面に映し出される作り物の星空は、部屋の中で見ているだけでも楽しいが、やはり本物の夜空にはかなわない。まだ夜風は冷たいけれど、しっかり防寒対策をして、iPadを片手に夜空を楽しむこととしよう。
◆スターウォークで再現した2011年2月18日の夜空
(2011.2.16日 山口新聞掲載)
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