日銀の金融研究所で机を並べて共に研究した、敬愛する同期の木下智博先生による著書を紹介します。
この本は、中央銀行が金融危機への対応で発揮する「最後の貸し手」機能、レンダー・オブ・ラスト・リゾート(LLR)機能について、その枠組みや具体的な実施事例、その背景にある事実関係や金融経済環境などを調査したうえで、制度設計や発動原則のあるべき姿を論じたものです。
「はじめに」にいきなり立川談志師匠が登場したのには驚きましたが、固いテーマの難しい内容を、丁寧に丁寧に解説しており、とても勉強になります。なお、この「はじめに」は全文が出版社のサイトで読むことができます。表紙カバーの写真を見ても、最近はやりの日本語フォントが使われ、少し斜めの縦書きで書かれており、とても印象的ですね。
金融政策の教科書、論評、解説書は山ほど出ているのに、金融システム安定を巡る解説書はあまり見かけることはありません。この分野が経済全体に影響を与える大事な政策の対象であることは認識されているはずなのですが、研究分野としても、より一般的な学生の関心対象としても、なかなか注目されることはありませんでした。是非、手に取ってご覧ください。